
食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。今回は身近な食材にひそむ「自然毒」について語っていただきます。
ご機嫌いかがでしょうか。今回のテーマは以前お話しした「知っておきたい食中毒のこと① ②」の続きで、動植物が持つ「自然毒」を深掘りしたいと思います。
ご説明した通り、厚生労働省のデータによると食中毒発生件数の上位3つはアニサキス、カンピロバクター、ノロウイルスで、それに次ぐ第4位が自然毒です。自然毒は植物性と動物性に分類され、有名なところだと前者にはジャガイモ、ビワ、キノコ、キャッサバなどの毒性物質が、そして後者にはフグや貝などの毒性物質があります。
身近なところではジャガイモの自然毒です。小学校の家庭科の授業で誰もが習ったことかと思いますが、ジャガイモは日が経って芽が出たり、皮が緑色に変色すると、そこに「ソラニン」や「チャコニン」と呼ばれる毒物が生成され、摂取してしまうと嘔吐や下痢などの典型的な食中毒症状をきたします。新じゃがと呼ばれる、収穫してすぐ出荷される小ぶりで水分含有量の多いものは、特に長期保存に向かないため注意が必要です。
ジャガイモは冷蔵保存する必要はありませんが、光を浴びることで毒物が生成されるので、通気性のいい、暗い場所での保存がすすめられています。またスーパーで買ってきたジャガイモには土がついていて、ついつい洗ってから保存したくなりますが、上記の理由につき、調理をするまでは水洗いを避けてそのままにしておくことをおすすめします。
しっかり加熱すれば大丈夫と思われがちなのですが、ソラニンもチャコニンも加熱では無毒化できません。よって皮つきポテトフライは食感が楽しくておいしいのは激しく同意しますが、中毒の観点から言うと、ジャガイモはしっかりと芽を除いたうえで、なるべく皮をむいて調理する方が良いでしょう。
続いてビワの自然毒についてです。こちらは種や未熟な果実の中に「アミグダリン」という青酸配糖体が含まれ、これを摂取してしまうと、体内でシアン化水素が生成され、中毒を起こしてしまいます。
過去には「アミグダリンが癌に効く」という誤った情報が流れたせいで、摂取して中毒になってしまった方もいました。現在ではこの情報は明確に否定されていますので、注意してください。種子を粉末状に加工したものが健康食品として出回っていますが、大量に摂取することは避けるよう呼びかけられています。
なお同じバラ科の食物であるアンズ、ウメ、モモの種も同様の中毒を起こすので、未熟な実は摂取しないようにしてください。
あと意外なもので銀杏にも有害成分が含まれており、摂取量を誤ると痙攣を起こしてしまうことがあります。昔からお婆ちゃんの知恵袋として「銀杏は年の数だけにしておけ」というものがあります。インターネットで調べると安全に食すことができる量は掲載元によってバラツキはあるものの、成人で40粒程度まで、小児で6-7粒程度までと書かれていることが多いです。つまり先述の格言はかなり理に適っています。先人たちの知恵の深さには頭が上がりません。ちなみに銀杏の匂いは足の爪垢の匂いと似ており、好き嫌いが分かれる木の実ですが、その匂いの原因は痙攣の要因物質とは関係ないので悪しからず…。

キノコの自然毒についても少しお話ししておきましょう。スーパーで売っているキノコは問題ありませんが、キノコ狩りに行って食用のものとよく似た毒キノコを食べてしまい、食中毒を引き起こす事例が毎年多くあります。重症化するケースもあるので、確実に食用であると判断できない場合は、採らない、食べないのはもちろん、人にあげたり、売ったりするのもやめましょう。
「虫が食べているから大丈夫」「縦に避けるキノコは食べられる」などいう言い伝えも誤ったものです。また加熱しても無毒化されないものがほとんどですので、注意が必要です。
次回はグルメのみなさんなら気になるであろうフグの毒と、すべての食中毒の中で死亡数が最も多い植物製自然毒についてお話しします。
埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock