じゃがいも殿堂レシピ
【じゃがいもレジェンド・レシピ】食べ進めるほど夢中になるシンプルな完全体。「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン

【じゃがいもレジェンド・レシピ】食べ進めるほど夢中になるシンプルな完全体。「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン

創刊36年の歴史の中で突出した、これぞ殿堂! と誰もが唸る極上の味。“じゃがいもレジェンド・レシピ”企画では、最高峰の技と愛がぎゅっと詰まった渾身の4皿をご紹介します。二皿目は、「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン。濃厚なのにまるで飽きがこない逸品です。

果てしなき「完璧グラタン道」。

寒い日に熱々を頬張ればそれだけで幸せ。グラタンは“ムード”の食べ物だから正直味に大差なし! などと思っていた、愚か者の私は、「コム ア ラ メゾン」の“じゃがいものグラタン”に、見事に打ち砕かれた。「コム ア ラ メゾン」は、食を愛する紳士淑女に深く信頼される赤坂のフランス料理店。南西部の郷土料理に特化した珠玉のメニュー12皿の一つに、じゃがいものグラタンが輝いている。その黄金の一皿を初めて食べたとき、真っ先に“完璧”の2文字が浮かんだ。

ホクホクと存在感のあるじゃがいもに、うっとりなじんだクリーム。その表面を香ばしいチーズが歯ざわりよく包んだ一口は、今までボヤけていた「グラタンにおける美味」にカチッ……と焦点を合わせ、そのど真ん中を貫いた。しかもまるで飽きがこない。濃厚なのに食べ進めるほど夢中になるこの味、一体、涌井勇二シェフは何をしてくれたのか。何がどうしてこうも違うのか。

涌井勇二シェフ
洋食屋に生まれ、フランス料理人を目指して26歳で渡仏。ボルドーのビストロで恩師となるミッシェル・キャレール氏に出会い、南西部の料理に没頭。

「特別なのはチーズくらい。オッソー・イラティという南西部でつくられる羊のチーズで、グッと土地の味になる。でもそれ以外はありふれた食材ですよ」
むしろ、バターも牛乳もスーパーで買えるスタンダードなものが良い。

「僕が求めるのは、素材ありきというよりも、シンプルな日常の料理なんです。色気づいた高級な味は、現地の家庭料理からかけ離れてしまう」。日常の味を愛し、素材に頼らない。涌井シェフのグラタンは、その分、きわめて丁寧な仕事に支えられている。

「たとえば塩はきっちり効かせること。そうでなければクリームが重たくなり、食べ進められません。とにかく全体のバランスが大切なんです」。だからこそ重要なのは調理の均一性。「じゃがいものスライスも、火入れも、とにかく均一を心がけます。不均一な要素があるとそこから美味しさのバランスが崩れてしまいますから」

完璧なバランスで“会心の出来だ!”と思えるのは、この味を20年以上つくり続けてきた涌井シェフですら年に一度くらい。日々変化する食材を前に安直な完成などない。だから飽きることもない。「コム ア ラ メゾン」のメニューリストが開店以来一度も変わらない理由に触れた気がした。シンプルな完全体を追求し続ける、涌井シェフの美味。私に再現できるだろうか……。

「1万回くらいつくったら美味しくできると思いますよ」と、真顔の涌井シェフ。
完璧グラタン道に近道はありません!

じゃがいものグラタン
輝く黄金のじゃがいものグラタン。焼きたてアツアツの一口は、サクッと香ばしいオッソー・イラティとクリームがたっぷりなじんだホクホクのじゃがいもが渾然一体となって、幸福以外の何物でもない! 濃厚なのに重すぎない後味で、一人一皿だって夢中で完食。

じゃがいものグラタンのつくり方

材料材料 (15皿分)

じゃがいも2.3kg(メークイン)
にんにく30g(かなり細かいみじん切り)
バター270g(食塩不使用)
生クリーム800〜900ml(乳脂肪分38%)
牛乳600〜700ml
チーズ適量(オッソー・イラティを使用。薄く削る。*1)
適量(サラサラしたタイプ)
ピマンデスペレット適量(*2)

*1 グリュイエールチーズなどでも代用可能だが、現地の味にするならオッソー・イラティを! フランス南西部でつくられる羊のチーズで、クセがなく、ミルキーな旨味が特徴。グラタンの表面をチーズの皮一枚で覆うように並べると、絶妙なサクッと感になる。
*2 辛味が穏やかで、旨味と甘味を併せ持つバスク地方の唐辛子。胡椒の代わりとして、味つけの要所要所に使っていけば、より一層、フランス南西部の味に仕上がる。

1鍋に材料を入れる

バターは2cm角に切り、鍋に広げる。できれば鍋は蓋付きで、そのままオーブンに入れられるものがよい。じゃがいもは皮をむき、スライサーで厚さ4mmに切りながら鍋に加える。粘りを保つため水にはさらさない。

鍋に材料を入れる

2生クリーム、牛乳を加える

じゃがいもを均等に広げて、生クリーム、牛乳を入れる。水分はギリギリひたるくらい。多すぎも少なすぎもダメ。

生クリーム、牛乳を加える
生クリームで濃厚さ、牛乳でさっぱり感を演出します!

3調味料などを加える

にんにく、塩(しっかりふたつまみ、20g)、ピマンデスペレット(ふたふり)を加え中火にかける。火が入るとじゃがいもから水分が出るため、かなり強めに塩を効かせてよい。

調味料などを加える

4コンロで下処理

沸騰するまでできるだけかき混ぜずに様子を見る。オーブンに入れる前に、鍋の中の温度を上げておくことで、じゃがいもに均一に火が入り、調理時間も短縮できる。

コンロで下処理
触りすぎは絶対にNG! アシスト程度にすること。

5下処理終了

熱が入るとじゃがいもから水分が出てくる。鍋肌のクリームが、ふつ、ふつと沸いてきたら、準備完了。

下処理終了

6オーブンへ入れる

蓋をして、予熱をしておいた180℃のオーブンへ。オーブンがない場合、厚みのある鋳物の蓋付き鍋を使うなど工夫して全体に熱を回す。

オーブンへ入れる

7均一に火を入れる

時折、オーブンから取り出して(8〜10分に一度)、じゃがいもを崩さないように鍋の中央と周縁を入れ替える。

均一に火を入れる

8ベースの完成

クリームにとろみがつき、じゃがいもがスッと割れたらベースの完成。味見をして、必要なら塩で味を調える。煮込みすぎに注意!

ベースの完成

9一晩ねかせる

じゃがいもが崩れないように丁寧にバットへ移す。自然に流れ落ちたものだけをバットに集める。すべてのじゃがいもがクリームにつかるように均等になじませる。常温で完全に冷ましてから冷蔵庫で一晩ねかせる。

一晩ねかせる

10仕上げる

直径15cmほどの小ぶりのグラタン皿を用意し、中心が少し高くなるように、放射状にじゃがいもを敷き詰める。理想は高さ3cm。ピマンデスペレット少々をふり、薄く削ったオッソー・イラティで表面を覆う。180℃のオーブンで10分ほど加熱し、焼き色をつける。

仕上げる

11完成

焼き色がついたらオーブンから取り出し、表面ににじみ出た余分な油を軽くきったら、完成!

完成
26年秋号「じゃがいも殿堂レシピ」
26年秋号「じゃがいも殿堂レシピ」
ホクホク、シャキシャキ、サクッ、とろ~り。切り方や調理法でガラリと食感が変わり、食いしん坊を惹きつけてやまない、定番野菜の絶対的王者。それがじゃがいも! 圧倒的な旨さに食卓がどよめく、殿堂入りの68レシピをお届けします。

店舗情報店舗情報

コム ア ラ メゾン
  • 【住所】東京都港区赤坂6‐4‐15
  • 【電話番号】03‐3505‐3345
  • 【営業時間】17:00~22:00(L.O.)
  • 【定休日】日曜
  • 【アクセス】東京メトロ「赤坂駅」6番出口より3分

文:平野紗季子 撮影:日置武晴