
もし、あのシェフが家で酒場を開いたら……という妄想からスタートしたWEB連載。二人目は、表参道「メゼババ」の高山大シェフが登場。全国の極上素材を駆使し、イタリアンを土台とした自由闊達な料理に仕立て、食通を唸らせ続けているシェフはどんなつまみを繰り広げるのだろうか?1品目は、焦げるギリギリの長時間火入れで未体験ゾーンの食感に仕上げた「焼ききゅうり」です。

宮城県生まれ。奥沢「ヴィコレット」勤務の後、単身イタリアへ。北部フリウリや中部トスカーナを中心に数年間のイタリア生活からの帰国後、国内イタリア料理店を経て2013年「メゼババ」をオープン。質実剛健なイタリア料理で客を熱狂させ、2023年に青山に移転。近年は無国籍つまみをベースにした「居酒屋メゼババ」も不定期開催。長期休暇には台湾や沖縄など亜熱帯の酒場に出没する。

いつものマーケットで気軽に買える食材で、家が酒場になるような、ずっと楽しめるつまみ。そんな永久定番とも言えるつまみを今回考えてくれるのは「メゼババ」の高山大シェフ。第一回は「焼ききゅうり」から。実はこれ、高山は高山でも、新宿御苑にある紹介制の炭火肉焼き店「NASQUILLO(ナスキロ)」高山いさ己シェフの得意技である「焦がしきゅうり」が元ネタなのだとか。教えてもらって試してみたら、「めちゃくちゃおもしろかった」という。きっちり加熱したきゅうりは味も食感も香りも別物です。

| きゅうり | 3本 |
|---|---|
| ごま油 | 90ml |
| にんにく | 3片(潰し) |
| 鷹の爪 | 3本 |
| 八角 | 3個 |
| シナモンスティック | 2本 |
| 花椒 | 約3粒 |
| 醤油 | 大さじ3 |
| 塩 | 大さじ1 |
| 砂糖 | 小さじ1/2程度 |
きゅうりを三等分に斜めに切る。皮にしっかり焼き目がつくように、大ぶりに切る。

フライパンにごま油ときゅうりを入れ、弱めの中火にかける。

あまりフライパンを動かさず、しばらく放っておいて返す、を繰り返して全面に焼き目をつける。中まで火を通しながら表面にもしっかり焼き目をつける(目安時間20分)。「高山いさ己シェフなら、ほとんど黒焦げにするんでしょうが、僕はそこまでやりません(笑)」


つぶしたにんにく、鷹の爪、八角、シナモン、花椒を加える。水気の多いきゅうりの皮に焼き目をつけるので、より焦げやすい乾燥スパイスは後から加える。

塩、砂糖を入れる。油が多く、味がきゅうりにからみにくいのでしっかり目の量を加える。「砂糖は奥行きをつくるための隠し味です」。

最後に醤油で味を調える。スパイスの香りと調味料の味をなじませながら煮詰め、きゅうりにからめていく。

きゅうりの焼き目とごま油、刺激的な鷹の爪に甘やかなシナモン、オリエンタルな八角などの香りが渾然一体となって立ち上る。皿の上はもうアジア旅!

焼き目の深いきゅうりに青臭さは微塵もなく、その食感はまるで別物。多種多様なスパイスの香りが引き出されたごま油を鷹の爪がピリリと引き締める。焼き目のついたきゅうりは甘醤油をまとい、まるで中華圏のホームパーティに遊びに来たかのよう。合わせるビールも国産はもちろん、青島ビールなどアジア系のビールと合わせても楽しい。
文:松浦達也 撮影:伊藤菜々子
※文中の高山さんのお名前の漢字は、正しくは“はしごだか”です。ブラウザ上で正しく表示されない可能性があるために「高」と表示しています。