夏はガツンと肉中華
【新富町・東京チャイニーズ 一凛】圧倒的な胡麻胡麻しさ! 丸鶏だからジューシーな「究極のよだれ鶏」のつくり方②(仕上げ編)

【新富町・東京チャイニーズ 一凛】圧倒的な胡麻胡麻しさ! 丸鶏だからジューシーな「究極のよだれ鶏」のつくり方②(仕上げ編)

暑いからこそ、パンチの利いたものが食べたくなる! 発売中の「dancyu」夏号では、旨くて辛くて香りがよくて、思わずお腹が鳴るような肉たっぷりの中華を特集しています。今回はその中から、2種の自家製辣油を使った特製だれがからむ、「一凛」の代名詞ともいえるよだれ鶏のレシピをご紹介します。

緻密に味と香りを重ねた「一凛」の代名詞

「東京チャイニーズ一凛」のよだれ鶏は手がかかる。何しろ毎日、この品のためだけに、名鶏の誉高い兵庫丹波産の高坂鶏(たかさかどり)が届くのだ。それも内臓入りの丸屠体。この日届いたのは4kgの超大物だった。現物を見た料理長の加藤佳佑シェフは「デカッ。これは2時間半コースですね」と苦笑した。

「よだれ鶏をしっとり、ジューシーに仕上げるには、骨付きの丸鶏にじんわり火を入れるに限ります。骨付きの肉は身縮みせず、繊細な口当たりに仕上がる。2kgなら1時間程度ですが、この大きさはさらに時間がかかる。でもこの型でないと出ない味があります」

店では、丸鶏から内臓を抜き、中をきれいに洗う。鶏肉を室温に戻し、ごく弱火でゆで上げる。そのゆで時間が「2時間半コース」なのだ。

工程のすべてに意味と理由がある。首までつかった寸胴鍋から引き上げた丸鶏は氷水で締める。骨の際まで熱が伝わった肉は、湯から引き上げただけでは余熱で加熱が進んでしまうからだ。急冷する間に、鶏肉の漬け地をつくる。丸鶏をゆでたスープに香味野菜を加えて沸かしたらアクを取り、こちらも急冷する。漬け込んで保存する以上、一度沸騰させる必要があるのだ。

そうして迎える入刀の儀。背中にスッと包丁を入れ、手羽ともも肉を外す。関節を外すときにブリンッ、フルフルフル……と肉が震える姿から、仕上がりの柔らかさがわかる。
その白く輝く柔肌がスパイス&ハーブ香る上品な漬け地に浸されて十数時間。濡れた輝きに弾力と清涼な香りを携えて戻ってくる。
味の核は、贅を尽くしたたれだ。複数の唐辛子を使った辛味辣油と、八角や桂皮を使った香味辣油という2種の自家製辣油。そこに黒酢醤油だれと大量の胡麻(1人前10gも!)を投入。

たれの海からつるりと口に滑り込ませた鶏肉の弾力と歯切れの心地よいこと……。胸肉の艶めかしい食感ともも肉の力強い味わいに、咀嚼と嚥下の間で欲望がせめぎ合う。だが、すべてを胃に収めても喜びは尽きない。

このよだれ鶏のたれはさらなる豊潤が展開できる。たとえば焼売を用意し、たれにつけてハフハフと頬張れば口当たりは冷から温へ、肉の醍醐味は清冽な鶏から野趣の豚へとシフトする。そしてフィナーレは再び冷へ。氷で締めた中華麺を投入して一気に啜れば、また別の官能に喉が歓喜する。

永遠に続くかのような欣喜雀躍。めくるめく夏の肉中華は終わらない!

山椒麺
鶏肉を食べた後に器に残ったたれには、鶏肉のエキスがさらに加わり、麺を和えれば至高の冷麺に。店で提供する締めの山椒麺は、「はしづめ製麺」謹製。

究極のよだれ鶏

材料材料 (つくりやすい分量)

★ 鶏肉用
・ 丸鶏1.2kg程度
・ 生姜1片(薄切り)
・ 長ねぎ3本分(青い部分)
・ 鶏肉のゆで汁400ml
A
 ├ 日本酒大さじ1
 ├ ローリエ1枚
 ├ 塩小さじ1
 └ 青花椒ひとつまみ
★ 黒酢醤油だれ用
・ 鶏のスープ100ml(鶏肉のゆで汁でも可)
B
 ├ 醤油大さじ3
 ├ 中国黒酢大さじ1と1/2
 ├ 酢小さじ1
 ├ 生姜小さじ1(みじん切り)
 ├ にんにく小さじ1/2(みじん切り)
 ├ 上白糖大さじ1
 └ 胡麻油小さじ1弱
★ 仕上げ用(1~2人前)
鶏もも肉と胸肉150g(つくり方③参照)
黒酢醤油だれ大さじ4(つくり方④参照)
陳麻婆辣油小さじ1(下記参照)
前菜辣油小さじ2(下記参照)
煎り胡麻10g
パクチー適量
ピーナッツ適量

1丸鶏をゆでる

鍋にたっぷりの湯を沸かし生姜と長ねぎと鶏肉を加えてごく弱火にする。湯温を80℃にキープして約1時間ゆでる(温度計を刺し、肉の芯温が70℃になっているのが目安)。ゆだったらすぐ氷水に取り急冷する。急冷することで旨味を閉じ込める。

丸鶏をゆでる
丸鶏をゆでる

2鶏肉の漬け地をつくる

①の鶏肉のゆで汁400mlにAを加えて、一度沸騰させたら火を止めて、ボウルに移し、氷水を当てて冷やす。

鶏肉の漬け地をつくる

3鶏肉を漬け込む

①の丸鶏から、もも肉と胸肉を切り出し保存容器に入れ②を注ぐ。半日から一日冷蔵庫で漬け込む。漬け込むことで鶏肉全体に深い味わいが出る。

鶏肉を漬け込む
鶏肉を漬け込む

4黒酢醤油だれをつくる

分量の鶏肉のゆで汁を一度沸かしてから、Bをすべて加えて混ぜ合わせ、粗熱を取る。温かいうちに混ぜることで生姜やにんにくの香りを引き立てる。

黒酢醤油だれをつくる
黒酢醤油だれをつくる

5仕上げる

ボウルに④の黒酢醤油だれ大さじ4、陳麻婆辣油小さじ1、前菜辣油小さじ2、たっぷりの煎り胡麻を入れて混ぜ合わせる。を食べやすい大きさにカットし、器に盛り、混ぜ合わせたたれをかけて、パクチー、ピーナッツを刻んでのせる。

仕上げる
26年夏号「夏はガツンと肉中華」
26年夏号「夏はガツンと肉中華」
蒸し暑い季節、体が本当に求めるのは明日への活力となる強い味!それは中華、特に肉料理だとdancyuは考えました。dancyu2026年夏号では、旨味・辛味・香りが心地よく、ガツンと食べごたえのある〝肉中華〟を提案します!渾身の53レシピです。

dancyu2026年夏号
A4変型判(160頁)
2026年6月5日発売/1,500円(税込)

教える人

加藤佳佑さん 「東京チャイニーズ 一凛」シェフ

加藤佳佑さん 「東京チャイニーズ 一凛」シェフ

四川料理の名店「飄香(ピャオシャン)」などで研鑽を積み、この4月、「一凛」の料理長に就任。頑強な四川料理の骨格を、新しい形で皿の上に落とし込み、素材の魅力を最大限に引き出す。

店舗情報店舗情報

東京チャイニーズ 一凛
  • 【住所】東京都中央区築地1-5-8
  • 【電話番号】03-3542-6663
  • 【営業時間】11:30~14:00(L.O.) 土日は~13:30(L.O.)、18:00~21:00(L.O.)
  • 【定休日】水曜
  • 【アクセス】東京メトロ「新富町駅」より3分

文:松浦達也 撮影:福尾美雪

松浦 達也

松浦 達也 (ライター/編集者)

東京都武蔵野市生まれ。家庭の食卓から外食の厨房、生産の現場まで「食」のまわりのあらゆる場所を徘徊する。食べる、つくるに加えて徹底的に調べるのが得意技。著書に『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)、『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(共にマガジンハウス)ほか、共著に『東京最高のレストラン』(ぴあ)なども。主な興味、関心の先は「大衆食文化」「調理の仕組みと科学」など。そのほか、最近では「生産者と消費者の分断」「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター。

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