
暑いからこそ、パンチの利いたものが食べたくなる! 発売中の「dancyu」夏号では、旨くて辛くて香りがよくて、思わずお腹が鳴るような肉たっぷりの中華を特集しています。今回はその中から、「四川家庭料理 中洞」の看板料理・肉そぼろ和え麺をご紹介します。
四川料理の麺とくれば、日本で真っ先に名前が挙がるのが担担麺だ。ところが本場・四川省成都市では、今や意外と見つけるのが難しい。むしろ、街のあちこちで見かけるのは素椒麺(スージャオメン)。辣油、花椒油、焙煎唐辛子などを合わせたキレのあるたれで、白いストレート麺を和え、わしわしとかき込むのが彼の地の日常だ。
そんな成都の市井の美味を、店主・中洞新司さんの感性で仕立てた「中洞」の“肉そぼろ和え麺”は、開業以来の看板料理。具は潔く、粗挽きの豚肉とゆで野菜のみ。箸で麺をたぐり寄せるたび、ぷんぷんと放たれる麻辣の香りを浴びて、気づけばぺろり。食べ終わるや否や、さらに一杯いけそうな気分になるから困る。
「麺は主役であり脇役」という中洞さんの言葉通り、麺を食べているのに麺の存在を忘れそうになるのは、無かん水のクセのない麺、自家製の香味油、調味料のバランスがなせる業だ。
ポイントは麻と辣の二つの油。花椒はコクと痺れのある赤、柑橘香のある青を合わせ、粗挽きにした直後に油に香りを移す。唐辛子は色、香り、甘味、コクが引き出されるよう、3種類をブレンドしてから油を投入。鮮烈な香りを保つため、「花椒は遮光袋に入れて、冷凍保存が鉄則」で、唐辛子は鮮度のいいうちに使い切る。
さらに味の土台を支えるのが、醤油、黒酢、ねぎ、にんにくなど、身近な調味料で描く「中華の味」。肉そぼろはしっとりと仕上げ、麺となじむ食感にするのが中洞流。「粗挽きなら食べごたえが出て、細挽きなら麺とよくからみます」。
こうして出来上がったたれと麺とを混ぜて混ぜて混ぜまくり、丼の中で渾然一体となったてらてらの麺を見た瞬間、理屈抜きで腹が減る。そして、一心不乱に食べ終えて、軽く汗ばんでから気づくのだ。コク、程よい辛さ、混ぜるほど立ち上る香り、飽きのこない美味しさ。「中洞の四箇条」は、まさにこの一杯のことじゃないか、って。
| 豚挽き肉 | 300g(*) |
|---|---|
| 醤油 | 大さじ1 |
| 中国たまり醤油 | 大さじ1/2(老抽) |
*店では6.5mmの粗挽き肉を使用。肉粒がしっかりとして食べごたえが出る。一般的な挽き肉だと麺とのからみがよりよくなる。
鍋を熱し、ごく強火で豚挽き肉を焦がさないよう炒める。

豚挽き肉からしみ出た濁った油が透き通ってきたら、醤油と中国たまり醤油を加えて調味する。肉に臭みを感じる場合は紹興酒大さじ1/2(分量外)を加えるとよい。

全体に色が回り、豚臭さが消えたら完成。

| ★ 和え麺だれ | (つくりやすい分量 ※1人分は20gを使用する) |
|---|---|
| A | |
| ├ 醤油 | 100g |
| ├ 中国黒酢 | 20g |
| ├ 中国たまり醤油 | 20g(老抽) |
| ├ 砂糖 | 大さじ1 |
| ├ 花椒油 | 10g(下記参照) |
| └ 焙煎唐辛子粉 | 小さじ1(煎った唐辛子を粉末にしたもの) |
| 麺 | 140g(*) |
| B | |
| ├ 辣油 | 大さじ1強(下記参照) |
| ├ 辣油の沈殿物 | 小さじ1/3(下記参照) |
| ├ スープ | 大さじ1(水でも可) |
| ├ 芝麻醤 | 4滴 |
| ├ 長ねぎ | 小さじ1強(みじん切り) |
| ├ にんにく | ひとつまみ(叩いてからみじん切り) |
| ├ 生姜 | ひとつまみ(叩いてからみじん切り) |
| └ 芽菜 | 小さじ1/2(ヤーツァイ) |
| 肉そぼろ | 大さじ2(上記参照) |
| キャベツ | 適量(チンゲン菜でも可) |
*店では、無かん水の特注麺を使用しているが、素麺や冷や麦を使ってもよい。
Aを上から順に混ぜ合わせる。

器に①20gとBを入れて、混ぜ合わせる。
キャベツはさっとゆで、水気をきる。麺をゆでて②の器に盛り、肉そぼろとキャベツをのせれば完成。麺にたれがからむように、熱いうちによく混ぜるのがポイント。


調理師学校卒業以来、中華一筋。各店で修業を積み、四川省成都市へ渡航。語学留学を兼ね、本場の味を体に叩き込んだ。帰国後は神楽坂「芝蘭」料理長を経て、自身の店を開いた。

文:佐藤貴子 撮影:安彦幸恵